■5月の「広報たかせ」に掲載された論文が入手できました。
内容的に気になりましたのでアップします。長文です。
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「三つ子の魂百まで」の科学的根拠を探る
高瀬町教育長 小野 健一
1.「狼少女カマラ」と「フィニアス・ゲージという青年」
「狼少女カマラ」のことは、多くの方が聞いたことがあると思う。1920年にインドで発見されたカマラは、生まれてから8歳くらいまで狼によって育てられた。宣教師だったシングに発見されて手厚く看護されたのだが、彼女は1929年に亡くなるまでほとんど言葉も話せず「人間らしさ」も発達させ得なかった。知性も人間性も未発達のまま亡くなってしまった。
人間としての成長の出発点である幼い頃に狼に育てられたせいで、適切な言語環境や人間関係の中にさらされなかったがために、言葉も話せるようにならず、遂には「人間らしさ」も発達させ得なかった、ということである。
もう一例、フィニアス・ゲージという青年の例を挙げる。19世紀中頃のアメリカ、荒野に鉄道がどんどん伸びている時代、彼は鉄道工事現場の責任者として働いていた。岩石の発破のために火薬を使っていて、本人のミスで突然火薬が爆発してしまった。その勢いで鉄棒が吹っ飛びゲージの頭を直撃し、脳の一部が大きく壊れた。彼は奇跡的に一命を取り留め、知覚や運動能力に関しては何ら後遺症もなく数週間後に退院した。
ゲージは工事現場の監督を任されていたほどに、事故の前は実直で責任感の強い好人物だったが、事故後は事故前とは正反対の、乱暴で刹那的で感情を抑えることが出来ない「動物のような人間」になってしまったのである。人格が一変し、理性を失ってしまった彼は、職を失い、各地を放浪した。彼から人格や理性という人間らしさ、そして将来を奪ったのは、まぎれもなく脳の一部、「前頭連合野」がダメージを受けた結果であることが、彼の死後に判明した。
このことは、前頭連合野が「人間らしさ」をつくるということ、即ち、前頭連合野は「ヒトを人間たらしめる脳領域」であることを示している。
2.八つの知性と一つの超知性
最新の脳科学では、私たち人類の知性は大きく次の八つに分類され、その各々の知性はある程度独立して働くというので、これを「多重知性」と呼んでいる。
○言語的知性・・言葉を見たり聞いたりして、それを理解し、記憶する。会話や読書、執筆などの基本的知性。
○絵画的知性・・視覚対象の形態や類型を理解し、記憶する。絵画や図形などを描く知性。
○空間的知性・・モノがどのような位置にどのような速度や関係で存在しているのかという知覚と記憶、そして、それに基づいて行動を組み立てる知性。
○論理数学的知性・・さまざまな数学的記号の理解とそれを論理的に操作する知性。
○音楽的知性・・音楽を聞いて知覚し、理解し記憶する。それらに基づいて、歌ったり、演奏したりする知性。
○身体運動的知性・・体の姿勢や運動の様子を知覚し、記憶する。それらに基づいて、運動を上手くコントロールする知性。
○社会的知性・・人間関係に代表される社会的関係の理解、記憶。それらに基づいて適切に社会的行動を行う知性。
○感情的知性・・他者の感情や自分の感情を理解・記憶し、自分の感情を適切にコントロールする知性。
さらに、これら八つの知性を総括しコントロールする知性、いわば「超知性」としての「自我」がある。
○自我・・自分の持つ多重知性を総括してうまく操作し、将来へ向けた計画を立てつつ前向きに生きる知性。
3.知性は環境によって伸びる
「三つ子の魂百まで」とは、古今東西言われてきたことである。このことは、八つの多重知性と一つの超知性は幼少期から意識的にそれなりの教育をするべきである、ということを意味するのではなかろうか。各々の知性をまんべんなく、幼少期から育てなければならない、ということである。
そもそも知性とは自発的に伸びるモノである。しかし、単に自発性に任せておけばよいというものでもない。環境によっては、伸びる知性も満足に伸びない。例えば言語的知性について言えば、特別な教育はしなくても、子供は自発的に母国語を理解し、話すようになる。母国語にさらされるという環境要因があるからこそ、子供たちは母国語を理解し話すようになるのである。「適切な環境」にさらすこと、これが基本である。
絵画的知性には、美しい景色、良質の絵画に囲まれて育つ環境が必須である。多彩な色を使って、自由に絵を描かせることは大切である。描いた絵の内容によって、幼児の精神状態が分かると言われている。
空間的知性と論理数学的知性には、例えば積み木やブロック遊びのようなものがよい。これらを様々に組み合わせて創意工夫しながら色々な立体物を作るには、空間的知性がかなり強く必要とされ、同時に論理数学的知性も伸ばし得る。「凸&凹ブロック」を開発した高瀬中の元教諭福崎毅さんは、「人は物を作って発達してきたのに、今は消費するだけで創造がない。それが、子供をおかしくしている。理屈を教えるより、創造する喜びを教えないといけません。」と幼児教育に警鐘を鳴らしている。
音楽的知性を育てるには、良質な音楽を絶えず聞かせるなど、それ相応の適切な環境が必要である。母親が子守歌を聞かせれば音痴になりにくいと言われている。楽器を演奏することも大切である。
身体運動的知性を伸ばすポイントは、裸に近い状態で自由に運動させることだ。自由な身体運動を妨げる厚着などは論外である。「高い高い」と身体を持ち上げたり、適度に体を振り回すことも意味があり、特に平衡感覚が発達する。
社会的知性、感情的知性、超知性としての自我については次項で詳しく述べる。
4.人間らしさに関わる前頭連合野の知性
「人間らしく育てる、幸せになるように育てる」ということは、「人間らしさ」をつくる前頭連合野を育てるということになる。人間らしさは、前頭連合野が働いて育つのである。その中心的な働きは、超知性の「自我」である。超知性としての自我が本質的に働くことによって、「自分自身の多重知性の能力を把握し、上手く操り、将来へ向けた計画を立て、前向きに努力する。」という「人間らしさ」が育つということである。逆に言えば、「人間らしさ」とは、前頭連合野の働きであるとも言える。だから、自我を特別に超知性と呼んでいるのである。自我は、多重知性の中でも、社会的知性と感情的知性との結びつきが強い。サルでも、自分や他者の感情を理解し、自分の感情をコントロールしなければ、群れ社会の中でうまく生きていくことは出来ない。
前頭連合野のダメージで、自我、社会的知性、感情的知性が著しく衰退することから、超知性の自我を中心とした社会的知性と感情的知性の複合体であるこれらの知性群を、脳科学では、「前頭連合野の知性」(以下、HQという。)と総称している。他の動物、霊長類でさえも、時間という制約を超えることは出来ないにもかかわらず、人間は、発達したHQのお陰で、数年先、数十年先を見越して、計画や展望、夢を抱くことが出来る。HQは自発性・主体性の柱でもある。自発性・主体性がベースとなり、独創性・創造性が育つ。
というわけで、将来へ向けた計画・展望、夢、自主性・主体性、独創性・創造性、集中力、幸福感、達成感などに関わるHQこそが、最も人間らしい知性ということになる。HQこそが人間らしさを作る。とすれば、HQを発達させることが、幼児教育の根幹であると言ってよい。それでは、HQを発達させるためには、どのようなことに留意すればよいのだろうか。
5.幼児教育の根幹は豊かな人間関係にさらすこと
チンパンジー類の系統から分かれた人類は、前頭連合野を特に豊かに発達させてきた。HQを担う前頭連合野こそが、私たち人類の特徴である。
8歳くらいまでの幼少期に、八つの知性と超知性の自我の構造と働きの基礎がつくられることは、冒頭に挙げたカマラの例からも分かる。この期間をとくに、「感受性期」という。中でも基本的である八つの知性の感受性期は、3・4歳までと言われている。「三つ子の魂百まで」には、はっきりとした根拠があるのだ。そして、自我の基礎は、8歳くらいまでに作られるということである。
だから、幼少期にPQの基礎をうまく育てられれば、子供たちは、あとは自分で伸びやかに育っていくはずである。問題は、HQがうまく育つ環境であるか否かである。言語の発達にとって「適切な環境」とは「幼少期に豊富な言語にさらされる」という環境であるように、HQの発達にとって「適切な環境」とは「豊かな人間関係にさらされる」という環境である。
豊かな人間関係とは、両親からの父性と母性を土台にした多様な関係である。兄弟姉妹どうしの関係、祖父母との関係、叔父叔母との関係、従兄弟姉妹どうしの関係、近隣の人たちとの関係、そして周辺の子供どうしの関係、そういった豊かで複雑な人間関係に囲まれることが、HQにとっての「普通の環境」である。この普通の環境は、人類の誕生以来綿々と続いてきたものである。逆に言えば、8歳くらいまでにそういった「普通の環境」におかれなければ、生涯に亘ってHQは未熟のままであり続けるということである。ことほどさように、HQには幼少期での「普通の環境」が重要なのである。一時代前には「普通の環境」が多少なりとも残っていたので、HQ教育など考えなくても何とかなっていた。由々しきことに、厚生白書で「三歳児神話」には科学的根拠がないなどと言われた頃から、不適切な幼児教育が広く行われ、そのツケが顕在化しているのではなかろうか。幼児教育に失敗したら、ほとんど取り返しがつかない。
6.では、どうすればよいのか
戦後日本の大きな流れとしての核家族化、少子化、都市化に伴う野原や広場の喪失、父性の希薄化、女性の社会進出による母性の軽視など、これらの全てが、HQにとっては「普通でない環境」をもたらしている。また、この「普通の環境」は、単に子供が集まればよいというものではない。いじめや喧嘩、いざこざや取っ組み合い、そういった否定的な側面と、仲良く助け合い、協力し合い、喜びや悲しみを共にする、そういった肯定的な側面が入り交じった複雑な関係こそが「普通の環境」である。
そのような観点に立てば、現在の保育所、幼稚園、小学校は、「普通の環境」を作る場としてまともに機能しなくなりつつあるように思えてならない。その「普通の環境」を再構築することが時代の流れに逆行することであることは、私は百も承知しているつもりである。では、どうすればよいのか。幼少期の子供の育て方、教育の仕方を抜本的に考え直すことだ。先ずは、直接関係している親と教師の自覚がその出発点となろう。しかし、それだけでは不十分であることは言うまでもない。地域社会や国レベルで改善・改革していかなければならないことは、私にも痛いほど分かっている。(テレビ、テレビゲームや携帯電話の問題については、改めて述べたい。)
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★注:以下の資料は私(石井)が関連付けて参考にしたサイトです。
脳の世界:京都大学霊長類研究所・行動発現分野
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/brain/brain/index.html
京都大学霊長類研究所・行動発現分野
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/brain/index.html
京都大学霊長類研究所
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/index-j.html
京都大学ホームページ
http://www.kyoto-u.ac.jp/
第19回『第1回あるある脳力テスト』Top page
http://www.ktv.co.jp/ARUARU/search2/aru19/19_1.html
東京都神経科学総合研究所
http://www.tmin.ac.jp/neuro/koji.html
東京都神経科学総合研究所
http://www.tmin.ac.jp/index.html
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Child Research Net Library CRNイベント
http://www.crn.or.jp/LIBRARY/EVENT/EVENT04/TAIDAN04.HTM
Child Research Net Top Page
http://www.crn.or.jp/index.html
Child Research Net こどもサイエンストーク
http://www.crn.or.jp/LABO/SCIENCE/index.html
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神奈川県立生命の星・地球博物館
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/museum/g.html
神奈川県立歴史博物館HP
http://ch.kanagawa-museum.jp/
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■広報に掲載された教育長の文章については、町のホームページに載せるように進言しました。
しかし、一向に載せる気配もありません。
■何度も何度も提言、進言をしているのですが、行政のホームページの存在理由について考えられていないのでしょうか。3月議会での町長の答弁は何だったのでしょうか?